自分で戸籍を取り寄せる方法[相続手続き][相続人調査]

人が亡くなり、その遺産を遺産分割協議によって家族に相続する場合、法定相続人が誰なのかを確定しなければなりません。

法定相続人とは
法定相続人とは、人が亡くなった時に、亡くなった方の遺産を相続できる相続する権利を持つ人のことです。法律で定められていることから法定相続人といいます。

どうして法定相続人が誰なのかを確定しなければならないかというと、遺産分割協議を行うためには、法定代理人全員で協議をする必要があるからです。法定代理人全員で協議を行わなかった遺産分割協議は無効ですし、遺産分割協議の結果に則って銀行預金や不動産の名義変更を行おうとしても、法定代理人全員で協議したことを示せなければ、名義変更を行うことができないのです。

注意
法定相続人を確定しないと
●遺産分割協議が無効になってしまう場合がある
●銀行預金や不動産の名義変更ができない

 

その為に必要な作業が戸籍の取り寄せです。戸籍の取り寄せとは、簡単にいうと、法定相続人に関する[戸籍の内容を証明する書類]を市役所や町村役場で発行してもらう作業になります。
その後、取り寄せた[戸籍の内容を証明する書類]にかかれた情報を確認して法定相続人を確定します。
また取り寄せた[戸籍の内容を証明する書類]は銀行などに対して、誰が法定代理人なのかを証明する書類という意味合いを持ちます。

戸籍の取り寄せについて

戸籍収集、戸籍集め、相続人調査などいろいろな言い方があります。

 

今回は、遺産分割協議によって相続をする際、自分で戸籍を取り寄せる方法について解説したいと思います。

 

 

目次

戸籍とは

戸籍を取り寄せる方法について解説する前に、そもそも戸籍とは何なのかについて確認しておきましょう。

辞書によるとこのような感じになります。

国民各個人の親族,相続法上の重要な身分関係を明確にするために,各個人の血族,姻族,配偶関係を記載した公簿。

出典:コトバンク

身分関係とは、簡単にいうと、誰と誰が夫婦で、誰と誰が親子かという人間関係のことです。このような人間関係を国が公式に記録する書類のことを戸籍といいます。

この戸籍の情報を確認するために必要なものが[戸籍の内容を証明する書類]です。[戸籍の内容を証明する書類]にはいろいろな種類があります。代表的なものが戸籍謄本ですね。これは(戸籍)全部事項証明書といわれたりもします。

他にも内容の違いによって
●戸籍抄本
●除籍謄本
●除籍抄本
などがあります。

これらの[戸籍の内容を証明する書類]を市役所や町村役場で発行してもらう作業が戸籍の取り寄せです。

 

 

誰の[戸籍の内容を証明する書類]を取り寄せればよいか?

ではここからは、実際に戸籍を取り寄せる作業のことをみていきたいと思います。

 

最初は、相続の手続きをする時に、誰の[戸籍の内容を証明する書類]を取り寄せなければならないかについてです。

ここから先、続柄は[亡くなった方]からみた続柄で表記します。

たとえば
ご本人→亡くなった方のこと
子供→亡くなった方の子供のこと

 

ご本人の戸籍は必ず必要

人が亡くなり、相続の手続きをする時に戸籍の情報が必ず必要な人がいます。
それはご本人です。ご本人に関する戸籍の情報は必ず必要になります。
ですので、ご本人の[戸籍の内容を証明する書類]は必ず取り寄せます。

 

ご本人以外に必要なのは、誰の戸籍の情報?

ご本人以外に誰の戸籍の情報が必要かどうかは、亡くなった方ご本人からみてどういう続柄の人が法定相続人になるかによって変わってきます。
ということは、どういう続柄の人が法定相続人になるのかを確認しなければならないということですね。

 

法定相続人の確認の方法

どういう続柄の人が法定相続人になるかのルールは法律で決まっています。ルールに当てはまった続柄の人は全員法定相続人になります。

ルールは2つあります。
それは
●順位のルール
●配偶者のルール
です。

その1:順位のルール

法定相続人になる続柄の順位を決めるルールです。
最初が①ご本人の子供です。ご本人に子供がいなければ②ご本人の親、ご本人に親がいなければ、③ご本人の兄弟姉妹という順番で法定相続人になる人が移っていきます。子供がいれば親や兄弟姉妹は法定相続人になりません。親がいれば、兄弟姉妹は法定相続人になりません。これが基本になります。

ですが、子供が亡くなっている場合などもありますので、もう少しルールは複雑です。
一般的なケースをチャートにすると以下のようになります。

①子供が一人でもいれば子供

●亡くなっている子供がいる場合

亡くなっている子供に子供(亡くなった人からみると孫)がいれば、孫が亡くなっている子供に代わって法定相続人になります。

 

②子供が一人もいなければ両親

●両親が共に亡くなっている場合

て祖父母のどちらかが健在の場合は祖父母が対象となります。

 

③両親・祖父母がいなければ兄弟姉妹

●亡くなっている兄弟姉妹がいる場合

亡くなっている兄弟姉妹に子供(亡くなった人からみると甥姪)がいれば、甥姪が亡くなっている子供に代わって法定相続人になります。

 

 

その2:配偶者のルール

こちらは簡単です。ご本人に配偶者がいる場合は、配偶者は法定代理人になります。

配偶者が健在の場合は配偶者

配偶者とは
配偶者とは
ご本人が男性であれば、亡くなった人の妻
ご本人が女性であれば、亡くなった人の夫
のことをいいます。

 

二つのルールを組み合わせれば、法定相続人が誰かわかる

順位のルール、配偶者のルールを組み合わせればどういう続柄の人が法定相続人になるか判明します。
表にすると以下のようになります。

子供、親、兄弟姉妹などがいる 子供、親、兄弟姉妹などがいない
配偶者がいる 配偶者と子供など 配偶者
配偶者がいない 子供など

 

 

法定相続人と必要な戸籍の情報

どういう続柄の人が法定相続人になるかが判明すれば、誰の戸籍の情報を取り寄せる必要があるかが分かります。表にまとめると以下のようになります(一般的なケース)。

法定相続人 必要な戸籍
子供 本人 子供(全員)
子供と孫 本人 子供(全員) 孫(子が亡くなっている人のみ)
本人 子供(全員) 孫
両親 本人 両親(どちらも)
祖父母 本人 両親(どちらも) 祖父母(どちらも)
兄弟姉妹 本人 両親(どちらも) 祖父母(どちらも) 兄弟姉妹(全員)
兄弟姉妹と甥姪 本人 両親(どちらも) 祖父母(どちらも) 兄弟姉妹(全員) 甥姪(兄弟姉妹が亡くなっている人のみ)
甥姪 本人 両親(どちらも) 祖父母(どちらも) 兄弟姉妹(全員) 甥姪(全員)

ひとつ[戸籍の内容を証明する書類]を手に入れると、そこに複数の法定代理人の戸籍の情報が書かれている場合もあります。ここに挙げたすべての人の[戸籍の内容を証明する書類]を一人ずつ取り寄せなければならないとういうことではありません。

 

[戸籍の内容を証明する書類]で確認する情報とは

[戸籍の内容を証明する書類]を集めて確認する必要がある情報というのは、冒頭にご説明しましたように、法定相続人が誰なのかを確定するための情報です。
例えば、子供のみが法定相続人になるケースであれば、ご本人に子供が何人いて、そのうち何人が存命で、何人が亡くなっているかということが分かればよいということになります。

そんなこと調べなくでも分かってるよと思われるかもしれませんが、銀行口座の名義変更の際などには、法定相続人が誰なのかを証明しなければなりません。口頭で伝えたところで銀行は納得はしてもらえませんから、どうしても公的な証明として[戸籍の内容を証明する書類]が必要になります。
また、残された家族は知らなかったけれども、ご本人に養子縁組をしている子供や認知した子供、以前に結婚していた時の子供がいる場合などもあります。

子供が何人いるかについて調べるためには、ご本人の出生から死亡までの[戸籍の内容を証明する書類]をもれなく集めればよいということになります。

子供が存命かどうかを調べるために必要な情報は、子供が結婚がしているかどうかなどで変わってきます。子供が結婚がしていなければ、一般的には亡くなった人の出生から死亡までの[戸籍の内容を証明する書類]で用が足りますが、子供が結婚していれば、亡くなった人の子供に関する[戸籍の内容を証明する書類]が必要です。

子供のみが法定相続人になるケースであれば、簡単ですが、甥姪のみが法定相続人の場合は、ちょっと複雑です。
甥姪のみが法定相続人の場合は以下のことを確認できるだけの[戸籍の内容を証明する書類]が必要です。
●子供がいないこと
●両親・祖父母がいないこと
●兄弟姉妹が全員亡くなっていること
●全ての甥姪

 

スタートは亡くなった人の戸籍から

いずれにしても戸籍集めのスタートはご本人の[戸籍の内容を証明する書類]を取り寄せるところから始まります。
ご本人の[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらい、内容を確認して、法定相続人を確定できるだけの情報を手に入れることができれば、それで戸籍の取り寄せは終了です。不足している情報がある場合は、不足している情報を確認するための[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらい、内容を確認。この作業を法定相続人を確定できるまで繰り返すということになります。

 

では続いてご本人の[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう方法についてみていきましょう。

 

[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらうために必要な準備

[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらうために調べておかなければならないこと

[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらうために調べておかなければければばらないことがあります。

それはご本人の本籍(地)と筆頭者です。

 

本籍(地)について

辞書によるとこのような感じになります。

本籍

1948年(昭和23年)に全面改正施行された戸籍法による日本の現行戸籍制度において、戸籍に記載される人が任意に定める、日本国内のいずれかの場所のこと。その場所を示す所在地表示が戸籍の「本籍」の欄に記載され、筆頭者氏名とともに、戸籍を表示する方法として用いられる。

出典:Wikipedia

ちょっとわかりにくいですね。
戸籍という書類をつくる際に自分の戸籍に紐づける場所のことと言ったらよいでしょうか?もっとわかりにくくなってしまったかもしれませんね。とにかく、自由に決めて良いことになっています。実際に住んでいるところや住所と同じにする必要もありません。よく言われることですが、皇居とか国会議事堂の住所でもオッケーです。そうは言っても、多くの方が何かしら自分に関係する場所にしていると思います。

MEMO
本籍と本籍は同じようなものとお考えください。

 

本籍地を調べる目的

本籍地を調べる目的は2つです。

本籍地を調べる目的
1:[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう市役所や町村役場を確定するため
2:[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう申請に必要なため

順番に説明します

1:[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう市役所や町村役場を確定するため

[戸籍の内容を証明する書類]を発行する機関は、市役所・町村役場です。但し、どの市役所・町村役場でも良い訳ではありません。
[戸籍の内容を証明する書類]を発行できるのは、その法定相続人の本籍地がある市役所、町村役場になります。ですので、本籍地が分からないと、どの市役所・町村役場で手続きをしてもらえばよいかわからないということになります。

 

2:[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう申請に必要なため

[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらうためには申請書に記入しなければなりません。
その際に必ず書かなければならない内容のひとつが本籍地です。
本籍地がわからないと、申請を行うことができません。

 

筆頭者について

タイトル
筆頭者とは
筆頭者とは戸籍の最初に記載されている人のことをいいます。

MEMO
亡くなった方が既婚者の場合は、結婚した際に苗字を変えなかった方が筆頭者になります。
亡くなった方が未婚者の場合は、両親のどちらか筆頭者となっているのが一般的です。

 

筆頭者を調べる目的

筆頭者を調べる目的は本籍地を調べる目的の2と同じです。
[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう際の申請書に記入しなければならないからです。筆頭者がわからないと、申請を行うことができません。

 

 

市役所・町村役場で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう際の手続きについて

市役所・町村役場で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう2つの方法

市役所・町村役場で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらうには2つの方法があります。

[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう方法
●市役所・町村役場の窓口で発行してもらう
●郵送で発行してもらう

順番に説明していきます。

 

市役所・町村役場の窓口で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう場合

市役所・町村役場で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう際に必要な手続きは
①申請書を書いて
②窓口で提出する
の2つです。

申請書は窓口に用意されています。

MEMO
ホームページからダウンロードできるようになっているところもありますので、プリントアウトできる方は事前に書いていくこともできます。

 

申請書の記載事項

申請書の記載事項は以下の通りです。

本籍(地)
筆頭者
対象者(今回は亡くなった方)
対象者(今回は亡くなった方)と申請する人の関係
請求の理由
証明書の種類

※市町村により異なる場合があります。

 

[戸籍の内容を証明する書類]の種類

[戸籍の内容を証明する書類]には以下のようなものがあります。

戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
除籍全部事項証明書(除籍謄本)
除籍個人事項証明書(除籍抄本)
改製原戸籍
戸籍の附票

※それぞれに違いがありますが、今回は説明は見送ります。

MEMO
申請の際には窓口で『○○(亡くなった方)の生まれたから亡くなるまでの戸籍を全部ください』と申し出れば、役所で該当するものを見繕ってくれます。

 

[戸籍の内容を証明する書類]の発行してもらうのにかかる手数料

[戸籍の内容を証明する書類]の発行してもらうのにかかる手数料は[戸籍の内容を証明する書類]の種類によって違います。

戸籍の種類 手数料
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
450円
除籍全部事項証明書(除籍謄本)
除籍個人事項証明書(除籍抄本)
750円

申請の時に必要なもの

申請の際には申請する方の身分証が必要です。

身分証の代表的なものは以下の通りです。

運転免許証、パスポート、マイナンバーカード(個人番号カード)、写真付き住民基本台帳カード、写真付きの官公署発行の証明書・資格者証

※健康保険証、年金手帳、介護保険証なども身分証になりますが、1種類だけではダメで、2種類用意する必要があります。

 

 

郵送で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう場合

窓口に行くことが難しい場合、郵送で申請する方法もあります。
この場合、窓口と少し異なるところがあります。

窓口と違うところ
費用の支払い方法が[定額小為替]になる
封筒・切手の用意が必要

郵送で[戸籍の内容を証明する書類]を発行してもらう際に必要な手続きは
①申請書を書いて
②郵送で提出する
の2つです。

郵送する中身

市役所・町村役場に郵送する中身は以下の通りです。

申請書
申請する人の身分証の写し
定額小為替
返信用封筒

※市町村により異なる場合があります。

 

順番にみていきます。

 

申請書
窓口で入手するか、ホームページからダウンロードしたものを印刷して使用します。

注意
郵送専用のものがある場合もありますので、事前にご確認ください。

 

申請する人の身分証の写し
窓口で発行してもらう時と同じものが必要です。コピーをご用意ください。

 

定額小為替
郵送の場合、郵送の際の費用の支払いは現金で行なうことができません。費用を支払う方法として定額小為替を使います。

定額小為替についてはこちらを参照してください。

参考 定額小為替について介護事業運営支援センター[埼玉]

定額小為替少し多めに入れておくことをお勧めします。余った分があったら、[戸籍の内容を証明する書類]が郵送される際に一緒に戻ってきます。

返信用封筒

[戸籍の内容を証明する書類]の返送先を書いた封筒を同封します。返送先は基本的には申請する人の住所(身分証と同じ住所)でなければなりません。

切手

返信用封筒に張り付けておきます。
通常は140円分もあれば用が足ります。

 

最後に

遺産分割協議によって相続をする際、自分で戸籍を取り寄せる方法について解説しました。戸籍の取り寄せはやるべきことをしっかりと理解すれば、誰にもできることです。まずは、誰の戸籍を取り寄せなければならないかを把握して、お住まいの近くの市役所・町村役場で全ての戸籍が揃うケースであれば、手間もさほどかかりませんので是非トライしてみてください。ちょっと難しそうだなと思われた場合はお手伝いできます。お気軽にご相談ください。